良い質問とは?「質問」と「問い」の違い
「質問」は情報を得るために尋ねるもの、「問い」は相手や自分に考えるきっかけを与えるものです。良い質問とは、相手が考えたくなり、答えが一つに決まっておらず、視野が広がる問いのことを指します。
この記事を読むメリット
「質問」と「問い」の違いを説明できる
情報を得る質問と、考えるきっかけをつくる問いを区別できます。
良い質問の5条件でチェックできる
自分の質問が「考えたくなる問い」になっているか確かめられます。
誘導・詰問を避けられる
悪い質問の見分け方と、言い換えの例がわかります。
問いをつくる練習法がわかる
毎日できる4つの練習で、問いの質を上げられます。
「質問」と「問い」はどう違うのか
日常では同じ意味で使われますが、対話の技術としては分けて考えると見通しがよくなります。
| 質問 | 問い | |
|---|---|---|
| 目的 | 情報を得る | 考えるきっかけを与える |
| 向き | 聞く側が知りたい | 答える側が考えたくなる |
| 答え | 事実として存在する | その場で生まれる |
| 時間 | すぐ答えられる | 沈黙が生まれる |
具体例で比べます。
- 「何が問題ですか?」 → 質問。すでに相手の中にある情報を取り出します。
- 「もしその問題が、成長のヒントだとしたら?」 → 問い。答えは相手の中にまだありません。その場で考えることになります。
どちらが優れているという話ではありません。状況を把握しなければ話は始まらないので、質問は必要です。ただ、相手の考えが行き詰まっているときに必要なのは、たいてい情報ではなく問いです。同じ材料をもう一度並べ直すきっかけが要る、ということです。
会話が噛み合わないときは、この2つが混ざっていることがあります。相手は情報を求めているのに、こちらが考えさせる問いを返す。あるいは、相手が考えたがっているのに、こちらが事実確認を重ねる。いま自分は情報を取りに行っているのか、相手に考えてほしいのか。この自覚があるだけで、聞き方も、答えを待つ時間の長さも変わります。
良い質問の5つの条件
良い質問には、いくつか共通する性質があります。
- 相手が考えたくなる。 問われた瞬間に「あ、考えたことなかった」と思える。答えを急かされる感じがしない。
- 答えが一つに決まっていない。 正解がある問いは、テストです。相手は正解を探し、間違いを恐れます。
- 相手の視野が広がる。 問われる前より、見えている選択肢や時間の幅が増えている。
- 相手の言葉で答えられる。 専門用語や、こちらの枠組みを使わなくても答えられる。「その施策のKPIは?」より「うまくいったとしたら、何を見て気づきますか?」。
- 聞く側が答えを持っていない。 これが最も見落とされやすい条件です。答えを持ったまま問うと、質問は誘導になります。
5つ目については、自分で点検する方法があります。相手が予想外の答えを返したときに、自分がうれしいかどうか。がっかりするなら、それは質問ではなく確認です。
もうひとつ、条件には入れていませんが実務で効く性質があります。短いことです。前置きと説明を重ねた長い質問は、相手が最後まで聞いた時点で最初の部分を忘れています。「つまり、〜ということだと思うんだけど、その点についてどう考えているか、できれば具体的に教えてほしくて」と言うより、「どう考えていますか?」のほうが届きます。良い質問は、たいてい一文で言えます。
悪い質問の見分け方
避けたい質問は、おおむね次の3つの型に分かれます。
誘導 — 答えを一方向に寄せる問い。「〜だよね?」「普通はこうするべきだと思わない?」。相手は同意するか、反論のコストを払うかの二択になります。
詰問 — 責任を追及する問い。「なぜやらなかったのですか」「どうしてこうなったの」。理由を尋ねているように見えて、実際には防御を引き出します。同じ関心なら「何があれば進められそうですか」と聞けます。
評価 — 採点として機能する問い。「これで十分だと思っているの?」。疑問文の形をとった否定です。
見分ける手がかりはシンプルです。その問いに正直に答えたとき、相手が損をしないか。 損をするなら、相手は正直には答えません。表面上は答えが返ってきても、それは相手が安全だと判断した範囲の答えです。会話がいつも当たり障りのないところで終わるなら、問いの中身より先に、この点を疑ってみる価値があります。
なお、悪い質問は悪意から出るとは限りません。心配しているから「大丈夫?」と聞き、早く助けたいから「こうしたら?」と聞く。善意で出た問いが、結果として相手の思考を止めることは珍しくありません。具体例はNG質問大全にまとめています。
質問には「深さ」がある
良し悪しとは別に、質問には届く層の違いがあります。本サイトでは7つの階層に整理しています。
| 層 | 問うもの | 例 |
|---|---|---|
| 1 | 事実 | 何が起きましたか |
| 2 | 認識 | それをどう捉えていますか |
| 3 | 感情 | そのとき、どう感じましたか |
| 4 | 意味 | それはあなたにとって何を意味しますか |
| 5 | 価値 | 本当は何を大切にしたいですか |
| 6 | 未来 | どうなっていたら理想ですか |
| 7 | 行動 | 最初の一歩は何ですか |
深い層が偉いわけではありません。事実の共有をとばして価値を問えば、相手は唐突に感じます。逆に、何度話しても事実の確認で終わっているなら、一段深い問いが要るかもしれません。詳しくは質問の7階層モデルで解説しています。
良い問いをつくる4つの練習法
その場で良い問いを思いつくのは難しいものです。型を4つ持っておくと、手が動きます。
① Whyを何に置き換える
「なぜ失敗したのですか」を「何があれば、次はうまくいきそうですか」に変えます。Whyは原因を掘りますが、日本語の「なぜ」は責める響きを帯びやすい言葉です。同じ関心を、Whatで聞き直せることが多くあります。
② 時間軸をずらす
いま行き詰まっているなら、時間を動かします。「3年後の自分が今日の状況を見たら、何と言うでしょう」「これまでで、少しでもうまくいっていたのはいつですか」。過去と未来のどちらにずらすかで、引き出されるものが変わります。
③ 視点を変える
「その相手からは、この状況はどう見えていると思いますか」「まったく事情を知らない人が見たら、何と言うでしょう」。当事者のまま考え続けると、視野は狭いままです。
④ 前提を外す
「もし失敗しても構わないとしたら、何を試しますか」「答えを知っているとしたら、何と言いますか」。制約を仮に外すと、本人が本当は持っていた案が出てくることがあります。
そのまま使える形にすると、次のようになります。
- 「もしうまくいくとしたら、最初に何が起きますか?」
- 「これまでで、少しでもうまくいっていたのはどんなときですか?」
- 「その決断を、いちばん応援してくれる人なら何と言うと思いますか?」
場面別・目的別の問いは質問大全から探せます。
良い質問の限界 — 万能リストは存在しない
ここまで条件を挙げてきましたが、大事な但し書きがあります。
良い質問は場面に依存します。 「本当は何を大切にしたいですか」は、信頼関係のある1on1では深い対話のきっかけになりますが、初対面の相手や、期限が迫った実務の場では浮きます。質問の良し悪しは、文単体では決まりません。
相手の状態にも依存します。 疲れているとき、感情が高ぶっているときに、考えることを求める問いを重ねるのは負荷になります。そういうときに必要なのは、たいてい問いではなく傾聴です。
そして、聞く側の意図が透けます。 形式的に条件を満たしていても、相手を動かす目的で使われた問いは、相手に伝わります。技術として整えるほど、何のために問うのかが結果を分けます。
具体的な技法の一覧はコーチングの質問技法で扱っています。
具体例:状況 → 関わり → 変化
- 状況
部下のミスに、つい「なんでこうなったの?」と聞いてしまう。
- 関わり
「次に同じ場面が来たら、どうしたい?」と未来に向けて問う。
- 期待される変化
責められる感覚が減り、部下が再発防止策を自分で考える。
- 状況
「宿題やったの?」(確認の質問)で口論になりがち。
- 関わり
「今日はどの順番で進めたい?」(考える問い)に変える。
- 期待される変化
子どもが自分で段取りを考え、取りかかりが早くなる。
- 状況
「何か質問ある?」と聞くと、いつも沈黙になる。
- 関わり
「この計画で、いちばんうまくいかなそうな所はどこ?」と範囲を絞って問う。
- 期待される変化
懸念が出やすくなり、計画の穴が早く見つかる。
※ 例は典型的な場面をもとにした説明用の想定です。結果を保証するものではありません。
- 1確認する事実を集める(いつ・どこ・何)
- 2理解する相手の考えや気持ちを聴く
- 3広げるほかの見方や選択肢を探す
- 4未来へ向けるどうしたいか、何から始めるか
研究からわかること:教訓と現場での活かし方
解決志向の質問は、問題志向の質問や両方を混ぜた質問よりも、自己効力感を高め、ネガティブな気分を下げた。
教訓原因探しを長く続けるより、望む状態へ問いを向けるほうが前に進みやすい。
現場での活かし方問題の確認は短くし、そのあと「どうなればいい?」へ切り替える。
出典:Grant & Gerrard(2020)
解決志向の技法の中でも、ミラクル・クエスチョンや例外の質問は気分の改善に、スケーリングは行動のステップを増やすのに役立った。
教訓問いの種類ごとに、得意な働きが違う。
現場での活かし方気持ちを軽くしたいときは例外の質問、行動を決めたいときはスケーリング、と使い分ける。
出典:Neipp ら(2021)
効果の大きさは、研究で報告された効果量の目安を「小・中・高」の言葉で示しています。研究の多くは海外の職場や学生を対象にしており、すべての人・場面に同じ効果が出るとは限りません。→ 研究・エビデンスの見方
- 質問は情報を取りに行くもの、問いは相手の思考を起動させるもの。目的が違うので、待つ時間の長さも変わる
- 良い質問の条件は5つ。中でも「聞く側が答えを持っていない」が最も見落とされやすく、誘導との分かれ目になる
- 誘導・詰問・評価を含む問いは、形が疑問文であっても相手の思考を狭める。善意から出ることも多い
- 良い問いは4つの型でつくれる。Whyを何に置き換える、時間軸をずらす、視点を変える、前提を外す
- 良い質問は場面と相手の状態に依存する。どんな相手にもいつでも効く万能の質問リストは存在しない
1分チェック:理解度クイズ
選択肢を押すと、その場で答え合わせができます。
Q1「問い」の説明として、いちばん近いものは?
答えと解説を見る
正解:B. 相手や自分に考えるきっかけを与えるもの
「問い」は考えるきっかけをつくるもので、答えが一つに決まっていないのが特徴です。
Q2次のうち「誘導質問」にあたるのは?
答えと解説を見る
正解:B. 〜したほうがいいと思わない?
答えを先に含んでいる質問は誘導になりやすく、相手が自分で考える余地を狭めます。
Q3行動の具体的なステップを増やすのに役立ったと報告された技法は?
答えと解説を見る
正解:A. スケーリング・クエスチョン
スケーリングは、いまの位置と「1点上げる方法」を考えることで、行動のステップを生みやすい技法です。
よくある質問
「質問」と「問い」は言い換えても問題ないのですか?
日常会話では区別せずに使われますし、それで困ることはあまりありません。ただ、対話の質を上げたいときには分けて考える価値があります。情報が足りないから聞くのか、相手に考えてほしいから聞くのか。この自覚があるだけで、聞き方も、答えを待つ時間の長さも変わります。本サイトでは、区別が必要な文脈では意識的に使い分けています。
クローズドな質問(はい・いいえで答える質問)は悪い質問ですか?
いいえ。事実確認や、話を整理して合意を取る場面では、クローズドな質問のほうが適切です。問題になるのは、考えてほしい場面でクローズドを使ってしまうときです。「大丈夫?」と聞けば多くの人は「大丈夫です」と答えます。ここで知りたいのが状態なら、「いまどのあたりまで進んでいますか」のほうが機能します(→コーチングの質問技法)。
良い質問のリストを覚えれば質問はうまくなりますか?
出発点としては有効ですが、それだけでは足りません。同じ質問文が、ある場面では相手の視野を広げ、別の場面では相手を追い詰めます。差を生むのは文そのものではなく、そこまでに何を聞いたか、どんな関係ができているかです。リストは引き出しとして持ちつつ、目の前の相手を見て選ぶ、という順番になります。
参考文献
- Vogt, E. E., Brown, J., & Isaacs, D. (2003). The Art of Powerful Questions: Catalyzing Insight, Innovation, and Action. Whole Systems Associates.
- Whitmore, J. (2017). Coaching for Performance (5th ed.). Nicholas Brealey Publishing.
- de Shazer, S., & Dolan, Y. (2007). More Than Miracles: The State of the Art of Solution-Focused Brief Therapy. Haworth Press.
- Palmer, S., & Whybrow, A. (Eds.) (2019). Handbook of Coaching Psychology (2nd ed.). Routledge.
- Grant, A. M., & Gerrard, B. (2020). Comparing problem-focused, solution-focused and combined problem-focused/solution-focused coaching approach. Coaching: An International Journal of Theory, Research and Practice. https://doi.org/10.1080/17521882.2019.1599030
- Neipp, M.-C., et al. (2021). Solution-focused versus problem-focused questions: Differential effects of miracles, exceptions and scales. Journal of Family Therapy. https://doi.org/10.1111/1467-6427.12345
