コーチングの種類大全|目的別に整理した分類と選び方

コーチングの種類 ⚪ 根拠の強さ:未確定 最終更新:2026-08-26/監修:徳吉陽河

結論

コーチングの種類は「どの理論にもとづくか」ではなく「何のために使うか」で整理すると見通しがよくなります。心理学系・ビジネス系・キャリア系・教育系・ライフ系の5系統に分けると、名前の多さに惑わされずに全体像をつかめます。

コーチングの種類を整理する視点

コーチングの名称は非常に多く、はじめて調べた人はまず名前の多さに戸惑います。エグゼクティブコーチング、ライフコーチング、認知行動コーチング、ストレングス・コーチング……。これらは同じ階層に並ぶものではありません。

整理の鍵は、名称が2種類の軸から生まれていることを知ることです。

  • 理論の軸:どの心理学理論・モデルを土台にしているか(認知行動、解決志向、ナラティヴなど)
  • 領域の軸:誰に、どんな場面で使うか(経営者、チーム、学生、健康行動など)

「エグゼクティブ向けの認知行動コーチング」のように、2つの軸は同時に成立します。本記事では実用性を優先し、目的を手がかりに5つの系統へまとめます。

5系統の全体像

系統 主な目的 代表的なコーチング 主な対象
心理学系 心理学の理論にもとづく行動変容・ウェルビーイング 認知行動コーチング、解決志向コーチング、ナラティヴ・コーチング、ACTコーチング、ストレングス・コーチング、ポジティブ心理学コーチング 個人全般
ビジネス系 業績・組織成果・マネジメント力の向上 ビジネスコーチング、エグゼクティブ・コーチング、リーダーシップ・コーチング、チームコーチング、組織開発コーチング 経営者・管理職・チーム
キャリア系 職業選択・移行・働き方の意思決定 キャリアコーチング、転職コーチング、就職支援コーチング 求職者・在職者・学生
教育系 学習の自律性・成長支援 教育コーチング、学習コーチング、スクールコーチング 児童・生徒・学生・教員
ライフ系 生活全般の充実・健康・自己管理 ライフコーチング、ウェルビーイング・コーチング、健康行動コーチング、セルフコーチング 個人全般

この表は、系統が独立していることを意味しません。たとえば健康行動コーチングは、動機づけの理論という点では心理学系と重なります。地図であって、区画整理ではないと考えてください。

心理学系のコーチング

心理学の理論と研究を土台に置く系統です。学問としてのコーチング心理学がこの領域を支えています。

  • 認知行動コーチング:考え方のクセ(認知)と行動の関係を扱います。「その考えを裏づける事実は何か」を検討し、行動実験で確かめます。
  • 解決志向コーチング:原因の分析より、すでにうまくいっている例外や、望む状態そのものに焦点を当てます。短期間で進みやすいのが特徴です。
  • ナラティヴ・コーチング:本人が語る「物語」に注目します。問題を本人から切り離して眺め、語り直すことで選択肢を広げます。
  • ACTコーチング:不快な考えや感情をなくそうとするのではなく、それを抱えたまま価値にそって行動することを支援します。
  • ストレングス・コーチング:弱点の補強ではなく、すでにある強みを見つけて活かす方向で組み立てます。
  • ポジティブ心理学コーチング:ウェルビーイング、感謝、意味づけなど、良好な状態を増やす研究知見を実践に応用します。

この系統は、根拠を確認しやすいという利点があります。一方で、理論名がついていても訓練の質は提供者によって大きく異なる点には注意が必要です。

ビジネス系のコーチング

組織のなかで成果を出すことを目的とする系統です。もっとも市場が大きく、研究も比較的多い領域です。

  • ビジネスコーチング:職場の目標達成全般を扱う総称です。
  • エグゼクティブ・コーチング:経営層・上級管理職を対象とし、意思決定や自己認識、対人影響力を扱います。守秘とスポンサー(依頼元)との三者関係の整理が重要になります。
  • リーダーシップ・コーチング:管理職としての振る舞いや部下育成の力を対象にします。
  • チームコーチング:個人ではなくチームそのものを対象にします。関係性や意思決定のプロセスに介入する点が個人コーチングと異なります。
  • 組織開発コーチング:制度・文化・仕組みの変革と連動して行われます。

職場コーチングを対象とした複数のメタ分析では、目標達成・スキル・態度・ウェルビーイングの各指標で正の効果が報告されています。ただし効果量は中程度で、研究間のばらつきも大きいという指摘があります。

キャリア系・教育系・ライフ系のコーチング

キャリア系は、職業選択や移行の意思決定を扱います。キャリアコーチング、転職コーチング、就職支援コーチングなどが含まれます。この領域では、キャリアカウンセリングとの境界が特に曖昧です。転職斡旋を伴う場合、支援者側に利害があるため、助言なのか引き出しなのかを本人が意識しておくことが大切になります。

教育系は、学習者の自律を支援します。教育コーチング、学習コーチング、スクールコーチングなど。学習内容そのものは教えたほうが速い場面も多く、ティーチングとの使い分けが前提になります。

ライフ系は、仕事に限らない生活全体を扱います。ライフコーチング、ウェルビーイング・コーチング、健康行動コーチング、そして自分で自分に問うセルフコーチング。健康行動を扱う場合、疾患の治療に踏み込まないという線引きが必要です。

名前が違っても中核は同じ

系統をひととおり見ると、ある事実に気づきます。名称が違っても、実際にやっていることの中核は驚くほど共通しているということです。

  • 相手の話を最後まで聴く(傾聴)
  • 望む状態を具体的に描く
  • 現状と資源を確認する
  • 選択肢を広げる
  • 本人が選び、小さく始める
  • 振り返って次につなげる

違いは、この共通プロセスのどこに重点を置くかどんな言葉で問うかにあります。認知行動なら「その考えの根拠は」に、解決志向なら「うまくいっているときは何が違うか」に重心が移ります。

そして、結果を左右する要因として繰り返し指摘されているのは、手法名ではなく関係の質です。信頼関係、本人が自分で決めている感覚、具体的な目標。この3つが揃っているかどうかのほうが大きいという報告があります。

自分に合う種類を選ぶ4つの軸

種類を選ぶときは、次の4つを順に確かめると迷いにくくなります。

確かめること
目的 成果を出したいのか、生き方を整えたいのか、決断したいのか
期間 数回で区切りたいのか、半年以上かけたいのか
根拠 どの理論にもとづくのか、研究の裏づけを説明できるか
相性 この人になら安心して考えを口に出せるか

そのうえで、選ぶ前に自分に問うとよい質問を挙げます。

  • 「今回のコーチングが終わったとき、何がどうなっていたら『受けてよかった』と言えますか?」
  • 「本当は、何を大切にしたいですか?」
  • 「同じ目的を叶える方法は、コーチング以外にどんなものがありますか?」
  • 「その話を、この人の前で正直に話せそうですか?」

最後の質問はコーチ選びの実質です。手法の適合よりも、話せるかどうかが先に立ちます。相性が合わないと感じたときに契約を見直せるかも、あわせて確認しておくと安心です。

分類の限界と注意点

  • 分類は絶対的ではありません。 公的な分類体系はなく、団体や書籍によって区分は異なります。本記事の5系統も便宜的なものです。
  • 名称にブランド価値がつくことがあります。 独自の名称を掲げていても、中身は既存手法の組み合わせという場合があります。名前ではなく、訓練時間・スーパービジョン・扱う理論を確認してください。
  • 万能の種類はありません。 どの系統も、抑うつや不安が強く日常生活に支障が出ている状態には向きません。その場合は医療・心理の専門家につなぐことが優先されます。
  • 種類選びに時間をかけすぎない。 実務では、系統を厳密に選ぶより、まず1回受けてみて相性を確かめるほうが早いことも多いと言われます。

種類の違いを知る目的は、正解を1つ選ぶことではありません。選択肢があることを知り、合わなかったときに別の道があると分かっていること。それが、この地図のいちばんの使い道です。

より基本的な内容はコーチングとはを、他の支援手法との違いはコーチングとカウンセリングの違いをご覧ください。

この記事の要点
  • コーチングの名称は数十種類あるが、目的で見れば5系統に整理できる
  • 系統が違っても、傾聴・質問・目標設定・振り返りという中核は共通している
  • 選ぶときの軸は「目的」「期間」「根拠の有無」「コーチとの相性」の4つ
  • 手法名より、信頼関係と本人が自分で決めている感覚のほうが結果を左右する
  • 分類はあくまで地図であり、実際のセッションは複数の系統をまたぐことが多い

よくある質問

コーチングの種類はいくつあるのですか?

名称の数を数えれば数十種類あります。ただし、その多くは背景にある理論の違い適用する領域の違いのどちらかで名前が分かれているだけです。たとえば「エグゼクティブコーチング」は対象者による呼び名、「認知行動コーチング」は理論による呼び名で、両者は同時に成り立ちます。数を覚えるより、目的で系統をつかむほうが実用的です。

どの種類がいちばん効果があるのですか?

「この種類がもっとも効果的」と言い切れる研究知見は、いまのところありません。職場コーチングを対象としたメタ分析では全体として正の効果が報告されていますが、手法どうしを直接比較して優劣を示した研究は限られています。むしろ、コーチとの信頼関係や目標の具体性といった共通要因のほうが結果に効くという指摘が繰り返しあります。詳しくは研究・エビデンスをご覧ください。

資格の名称が種類を表しているのですか?

必ずしもそうではありません。資格の名称は、その団体が扱う理論やプログラムを示しているだけで、公的な分類体系ではありません。同じ「ライフコーチ」という名称でも、団体によって訓練時間も内容も大きく異なります。名称ではなく、学ぶ理論・訓練時間・スーパービジョンの有無を確認するのが確実です。

複数の種類を組み合わせてもよいのですか?

実務では組み合わせるほうが一般的です。たとえば、序盤は解決志向で望む状態を描き、行き詰まったところで認知行動的に考え方のクセを扱う、といった進め方があります。ただし、扱う理論を増やすほど訓練の負担も増えます。まずは自分に合う1つの型を身につけてから広げるほうが、実務では安全だと言われます。

参考文献

  1. Palmer, S., & Whybrow, A. (Eds.) (2019). Handbook of Coaching Psychology: A Guide for Practitioners (2nd ed.). Routledge.
  2. Cox, E., Bachkirova, T., & Clutterbuck, D. (Eds.) (2018). The Complete Handbook of Coaching (3rd ed.). SAGE.
  3. Stober, D. R., & Grant, A. M. (Eds.) (2006). Evidence Based Coaching Handbook: Putting Best Practices to Work for Your Clients. Wiley.
  4. Theeboom, T., Beersma, B., & van Vianen, A. E. M. (2014). Does coaching work? A meta-analysis on the effects of coaching on individual level outcomes in an organizational context. The Journal of Positive Psychology, 9(1), 1-18.
  5. Ives, Y. (2008). What is 'coaching'? An exploration of conflicting paradigms. International Journal of Evidence Based Coaching and Mentoring, 6(2), 100-113.
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