手応えを感じた最近の出来事は、何ですか?
この質問のねらい
進捗の確認は、たいてい未達の点検になります。できていないことを数えるのは必要ですが、それだけを続けると、動いている部分が視界から消えます。この質問は、動いた部分を先に確保するための問いです。
「手応え」という言葉を使っているのが要点です。成果が出たかどうかではなく、本人の内側の感触を聞いています。数字にならない前進も対象に入るため、長期の取り組みの途中でも答えが出ます。
使いどころ
- 中間の振り返りで、進捗を扱う前の導入として
- 取り組みが長期化し、達成感が得られにくいとき
- 1on1の冒頭で、話す土台をつくりたいとき
効きにくいのは、明らかに停滞している時期です。手応えを探させることが、追い打ちのように響くことがあります。そのときは「うまくいかなかった中で、これはやれたと思えることはありますか」と条件を緩めてください。
また、上司が使う場合は注意が必要です。手応えの報告が業績アピールにすり替わると、この質問の意味は失われます。評価の場ではないことを先に伝えておくと、答えが素直になります。
言い方のバリエーション
- 「先週から今週で、少しでも前に進んだと思えることはありますか?」(期間を区切る)
- 「小さくて構いません。やってみて手応えがあったのはどれですか?」(規模を下げる)
- 「前回の話から、何か動いたことはありましたか?」(前回との差分で聞く)
- 「うまくいきそうだ、と感じた瞬間はありましたか?」(感触の瞬間に絞る)
背景にある考え方
仕事の中で意味のある前進を実感できた日は、そうでない日に比べて感情や意欲の状態が良好だったという報告があり、進捗の原理(progress principle)として知られています。大きな達成でなくても、前進の実感自体が動機づけと関連するという見方です。
Bandura の社会的認知理論でも、実際の達成経験が自己効力感の主要な源とされています。ただし、経験が自動的に効力感に変わるわけではなく、それを自分の行動の結果として捉えられるかが鍵になります。手応えを拾ったら、次に「何をしたからか」を一緒に確かめると、一往復で終わりません。
階層1・事実 何が起きたのかを共有する。前提をそろえる層。
- その手応えは、どこから来たと思いますか?
- 同じことを、もう一度起こせそうですか?
- 前回と比べて、何が変わっていましたか?
