すでにやれていることは、何ですか?
「すでにやれていることは、何ですか?」は、ゼロから始める前提を崩し、現在ある資源を確かめる質問です。使いどころと注意点を解説します。
この質問のねらい
相談の場では、話題はこれから足りないものに集中します。そのため、すでにできていることは会話に登場しません。この質問は、その見落としを拾い直します。
前提の置き換えでもあります。「まだ何もしていない」と感じている人の多くは、実際には何かをしています。調べた、迷った、相談に来た。それらは行動として数えられます。ゼロからの出発ではないとわかると、次の一歩の重さが変わります。
使いどころ
- 初回面談で、これまでの経緯を聞くとき
- 「何もできていません」という言葉が出たとき
- 行き詰まりで、話す材料が尽きたように見えるとき
- 目標が大きく、現状との差に圧倒されているとき
注意点があります。慰めとして使うと機能しません。「そんなことないですよ」と否定から入る形になると、本人の実感を否定することになります。あくまで事実を確認する問いとして、具体的に何をしたのかを聞いてください。また、答えが出ないときに粘るより、聞き手が観察した事実を伝えるほうが早いことがあります。「今日ここに来られたことも、ひとつでは」といった形です。
言い方のバリエーション
- 「これまでに試したことはありますか?」(経緯を聞く)
- 「悪化を防ぐためにやっていることは何でしょう?」(維持に着目)
- 「小さなことでかまいません。続けていることはありますか?」(継続に着目)
- 「他の人から見たら、できていると言われそうなことは?」(視点を借りる)
背景にある考え方
解決志向アプローチでは、クライアントはすでに解決のための資源を持っていると考えます。支援者の役割は不足を補うことではなく、すでにある対処を見つけて言葉にすることだと説明されます。
変化のステージモデルの観点でも、情報を集めたり検討したりする段階は、行動の前段として位置づけられます。まだ実行していないことは、何もしていないことと同じではありません。現状を把握できた時点で、すでに動きは始まっているという見方です。ただし、確認だけで満足すると次に進みません。資源を見つけたあとは、それをどう使うかへ会話を進めてください。
- 1聞くすでにやれていることは、何ですか?
- 2深めるそれは、どうやってできるようになったのですか?
- 3広げるそれを少しだけ増やすとしたら、どうなりますか?
- 4決めるでは、最初の小さな一歩は何にしますか?
答えを急がず、相手の言葉を受けとめてから次へ進みます。沈黙は考えている時間です。
つまずきやすい例
つまずき行き詰まっている人に「できていることは?」と聞き、「何もできていない」と返されて終わる。
なぜ?落ち込んでいるときは、できていることが見えにくいからです。
こうする「大変な中でも、続けていることは?」と、当たり前になっていることに目を向けます。
階層2・認識 その出来事をどう捉えているかを言葉にする層。
- それは、どうやってできるようになったのですか?
- それを少しだけ増やすとしたら、どうなりますか?
- 自分では当たり前だと思っていることはありますか?
この質問は書籍『結果を出す人はどんな質問をしているのか?』第5章「現状を把握できただけでも、すでに一歩踏み出せている」の考え方にもとづいています。→ 書籍について
