アカウンタビリティ(Accountability)
自分で決めたことを、自分に対して引き受ける姿勢のこと。コーチングでは、他者が監視するのではなく本人が自分の行動を説明できる状態を指します。
責任追及とは別のもの
日本語で「責任」と訳すと、できなかったときに問い詰められるイメージがつきまといます。コーチングで使うアカウンタビリティはそれとは別のものです。自分が決めたことについて、自分で説明できる状態を指します。
英語の accountability は「account(説明)できること」に由来します。誰かに罰せられるための概念ではなく、自分の行動と結果のつながりを自分で把握しているという意味に近い言葉です。
責任追及(blame)との違いは、視線の向きです。責任追及は「なぜやらなかったのか」と過去へ向かいます。アカウンタビリティは「何が起きて、次はどうするか」と現在と未来へ向かいます。
監視にすると効果が下がる
実務でよく起こる失敗は、アカウンタビリティを「進捗管理」に置き換えてしまうことです。コーチが毎回チェックリストを確認し、できていなければ理由を尋ねる。この形をとると、本人の関心は「行動すること」から「報告を乗り切ること」へ移ります。
自己決定理論では、外から統制されている感覚が強まるほど、内発的な動機づけは弱まると説明されています。監視型のフォローは、短期的には行動を引き出すことがあっても、支えを外したときに続かなくなりやすい形です。
だからこそ、約束の相手を「コーチ」ではなく「自分」に置く設計が重要になります。コーチの役割は、決めたことを覚えておいて代わりに管理することではなく、本人が自分で振り返れる場をつくることです。
質問例
- 「その約束は、誰に対しての約束ですか?」
- 「もし今週それができなかったとしたら、何が起きていたと思いますか?」
- 「次に会うとき、どんな状態になっていたら『進んだ』と言えますか?」
- 「私に報告しなくてよいとしたら、それでもやりたいことですか?」
最後の質問は、行動が本人のものか、コーチへの体裁かを見分けるのに役立ちます。答えに詰まるようなら、「それは誰の目標か」という観点から目標そのものを置き直したほうが早いことがあります(質問大全も参照)。
注意点
できなかった週の扱い方が、この概念のすべてと言っても大げさではありません。「なぜできなかったのですか」は詰問になりやすい問いです。「何が邪魔をしましたか」「どこまでは進みましたか」と、事実を確認する形に置き換えてください。
また、行動が続かない背景に体調や職場環境の問題がある場合、意志の問題として扱うのは適切ではありません。心身の不調が疑われるときは、医療や相談機関につなぐことを優先します。
参考文献
- Deci, E. L., & Ryan, R. M. (2000). The "what" and "why" of goal pursuits: Human needs and the self-determination of behavior. Psychological Inquiry, 11(4), 227-268.
