傾聴(アクティブリスニング)(Active Listening)
相手の話を評価や助言を挟まずに受け取り、理解した内容を言葉で返して確かめながら聴く姿勢と技法。コーチングのあらゆる質問技法の土台になります。
どういう意味か
傾聴は「黙って聞くこと」ではありません。理解したことを相手に返し、ずれていないか確かめながら聴く能動的な行為です。英語の active listening という呼び方は、この能動性を指しています。
来談者中心のアプローチを提唱した Rogers らは、相手の言葉の内容だけでなく、その背後にある感情や意味まで受け取ろうとする聴き方を論じました。現在のコーチングで使われる傾聴も、おおむねこの流れを引いています。
実務上の意味はもっと単純です。人は、理解されたと感じるまで次の話に進めません。理解を返さないまま質問を重ねると、相手は同じことを言い直し続けます。傾聴は、質問の前提条件です。
どう返すか
返し方には段階があります。
| 種類 | 例 |
|---|---|
| 促す | 「それで、どうなりましたか?」「もう少し聞かせてください」 |
| 内容を返す | 「つまり、期限より品質を優先したかった、ということですね」 |
| 感情を返す | 「そこはかなり悔しかったのですね」 |
| 要約する | 「ここまでで3つ出てきました。〜と〜と〜ですね。合っていますか?」 |
質問として使える形にすると、次のようになります。
- 「いま伺った話を私の言葉でまとめてみます。〜という理解で合っていますか?」
- 「その話のなかで、いちばん引っかかっているのはどこですか?」
要約したあとに「合っていますか」と確認を添えるのが要点です。ずれていれば相手が訂正してくれます。訂正の過程で、本人の考えがさらに明確になります。
注意点
先回りしないでください。 話の途中で「つまりこういうことですね」と結論を出すと、相手は自分で考える機会を失います。要約は、ひと区切りついてからで十分です。
感情を返すときの決めつけも失敗のもとです。「つらかったですね」と断定するより、「つらかった、という感じでしょうか」と余地を残すほうが安全です。違えば相手が言い直せます。
うなずき・相づちが機械的になるのもよくある問題です。オンラインでは特に、大きくうなずくことより、相手の言葉を一語そのまま繰り返すほうが伝わります。
なお、傾聴だけでは扱えないこともあります。心身の不調や強い苦痛が続いている場合は、聴き続けるのではなく、医療機関や相談窓口につなぐ判断が必要です。
参考文献
- Rogers, C. R., & Farson, R. E. (1957). Active Listening. Industrial Relations Center, University of Chicago.
- Miller, W. R., & Rollnick, S. (2013). Motivational Interviewing: Helping People Change (3rd ed.). Guilford Press.
