ミラクル・クエスチョン(Miracle Question)
「もし一晩で問題が解決していたら、朝いちばんに何で気づきますか」と尋ね、望ましい状態を具体的な行動レベルで描いてもらう解決志向の質問技法です。
どういう意味か
ミラクル・クエスチョンは、解決志向ブリーフセラピー(de Shazer、Berg らが発展させた実践)を代表する質問です。原型はおおむね次のような形をしています。
「少し変わった質問をしてもいいですか。今夜あなたが眠っているあいだに奇跡が起きて、いま悩んでいることが解決したとします。でも眠っていたので、奇跡が起きたことは知りません。朝起きて、いちばん最初に『何かが違う』と気づくのは、どんなことでしょうか?」
狙いは、原因を探ることではなく、解決した状態を具体的に描くことにあります。問題の分析を続けても、望ましい状態の像は出てきません。先に「どうなっていたいか」を細部まで言葉にすると、そこから逆算した行動が見つけやすくなります。
もうひとつの狙いは、答えを行動レベルに落とすことです。「気が楽になっている」ではなく、「朝、コーヒーを飲みながら今日の予定を確認している」まで具体化すると、それは今日からでも試せる行動になります。
質問例
長い原型をそのまま使う必要はありません。短縮した形でも機能します。
- 「もし明日の朝、この件がきれいに片づいていたとしたら、最初に何で気づきますか?」
- 「その朝、まわりの人はあなたのどんな様子を見て『何か違う』と思うでしょうか?」
- 「その状態のうち、ほんの少しでもすでに起きている日はありますか?」
最後の質問が実務では効きます。理想の断片がすでに存在していることに気づくと、話は「ゼロから始める」ではなく「増やす」に変わります。
注意点
唐突に投げないでください。 前置きなしに奇跡の話を始めると、真剣に悩んでいる人ほど、はぐらかされたと感じます。「少し変わった質問をしてもいいですか」と断りを入れるのは、原型に含まれる大切な手続きです。
深刻な苦痛や心身の不調がある場合、この質問は向きません。想像する余力がない状態で理想像を求めるのは負担になります。医療や専門的な支援が必要な場面では、質問技法で対処しようとせず、専門機関につないでください。
また、答えが出てこないときに粘りすぎないことです。「思いつかない」と言われたら、スケーリング・クエスチョンのように答えやすい形に切り替えるほうが、対話は続きます。
参考文献
- de Shazer, S., & Dolan, Y. (2007). More Than Miracles: The State of the Art of Solution-Focused Brief Therapy. Haworth Press.
- Berg, I. K., & Szabó, P. (2005). Brief Coaching for Lasting Solutions. W. W. Norton.
