心理的安全性(Psychological Safety)

用語辞典 1on1・リーダーシップ よみ:しんりてきあんぜんせい/最終更新:2026-08-26

定義

このチームでは対人的なリスクをとっても大丈夫だ、とメンバーが共有している信念のこと。仲の良さや居心地の良さとは別の概念です。

どういう意味か

Amy C. Edmondson が1999年の研究で定式化した概念で、「このチームでは対人関係のリスクをとっても安全だ」とメンバーが共有している信念を指します。ここでいう対人リスクとは、次のような行為に伴うものです。

  • 分からないことを「分かりません」と言う
  • ミスを隠さずに報告する
  • 異論や懸念を口に出す
  • まだ形になっていない提案を出す

これらはいずれも、「無能だと思われる」「面倒な人だと思われる」というリスクを伴います。心理的安全性が高い状態とは、そのリスクを引き受けても不利益を被らないという見通しが共有されている状態です。

なお、Edmondson の元の研究は医療チームのミス報告をめぐるものでした。安全性の高いチームほど報告されるエラーが多かった——つまり、ミスが多いのではなく、ミスが表に出ていた——という観察が出発点になっています。

「ぬるま湯」ではない

最も広まっている誤解が、心理的安全性=仲が良い、優しい、厳しいことを言わないというものです。これは概念の内容とは異なります。

心理的安全性が意味するのは、異論や指摘を出せることです。むしろ、対立を避けて誰も本当のことを言わないチームは、心理的安全性が高いのではなく低い状態にあたります。言えないから言わないのか、言う必要がないから言わないのかで、外から見た静けさの意味は正反対になります。

Edmondson 自身も、心理的安全性と業務基準の高さは対立するものではなく、両方が揃ったときに学習が起きると述べています。基準を下げることは、この概念とは関係がありません。

高めるための質問例

  • 「いま話したことに、違う見方をする人はいますか?」(会議)
  • 「私が見落としていることがあるとしたら、何だと思いますか?」(会議)
  • 「言いにくいことで、伝えておきたいことはありますか?」(1on1)
  • 「うまくいかなかったところを共有してもらえると助かります。何がありましたか?」(振り返り)

2つ目は、リーダー自身が「自分は間違いうる」と示す問いです。研究でも、リーダーが自分の限界を認める姿勢(リーダーの可謬性の表明)が影響すると指摘されています。

注意点

制度で作れるものではありません。 「心理的安全性の高い職場にします」という宣言や、匿名アンケートの導入だけでは変わりません。人が見ているのは、誰かが異論を言ったときに実際に何が起きたか、というただ一点です。一度でも報復や軽視が起きれば、宣言は無効になります。

また、心理的安全性を理由に、必要な指摘や評価を避けるのは本末転倒です。「言いにくいことを言わない配慮」は、この概念の実践ではありません。

チーム単位の概念であることにも注意してください。同じ組織でも、上司が違えば水準は変わります。全社平均のスコアだけを見ていると、実際に問題が起きている場所が見えなくなります。

参考文献

  1. Edmondson, A. C. (1999). Psychological safety and learning behavior in work teams. Administrative Science Quarterly, 44(2), 350-383.
  2. Edmondson, A. C. (2018). The Fearless Organization. Wiley.
『結果を出す人はどんな質問をしているのか?』書影

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