自己効力感(Self-efficacy)

用語辞典 コーチング心理学 よみ:じここうりょくかん/最終更新:2026-08-26

定義

ある課題を自分は遂行できるという見通しのこと。Banduraが提唱した概念で、能力そのものではなく「できそうだ」という自己の判断を指します。

どういう意味か

Albert Bandura が社会的認知理論の中核概念として提唱したもので、「自分はこの状況でこの行動をやり遂げられる」という見通しの強さを指します。日本語では自己効力感、あるいは効力予期と訳されます。

重要なのは、実際の能力とは別物だという点です。同じ技能を持つ二人でも、「できそうだ」と見ている人と「たぶん無理だ」と見ている人では、着手のしやすさ、粘り強さ、失敗後の立て直しが変わってきます。

また、自己効力感は課題ごとに異なります。人前で話すことへの効力感が低くても、資料を作ることへの効力感は高い、ということが普通に起こります。「自信がない人」という人格の特性ではなく、場面と行動に紐づく判断として扱うのが正確です。

4つの情報源

Bandura は、自己効力感が主に4つの経験から形づくられると整理しました。

情報源 内容 コーチングでの扱い
達成経験 実際にやってみて、できた経験 最も影響が大きいとされる。小さく刻む
代理経験 自分に似た人ができているのを見る 遠すぎるモデルは逆効果
言語的説得 他者や自分からの励まし・承認 根拠のない励ましは効きにくい
生理的・情動的状態 緊張、疲労、体調をどう解釈するか 「緊張=準備できている」と読み替える

なかでも達成経験の影響が最も大きいとされます。だからこそ、コーチングでは目標を小さく刻んで「できた」を積む設計が繰り返し使われます。

質問例

  • 「10点満点で、いまどのくらい『できそう』だと感じていますか?」
  • 「その点数が1つ上がるとしたら、何があれば上がりますか?」
  • 「過去に、これに近いことをやり遂げた経験はありますか?」
  • 「いまの緊張は、あなたに何を教えてくれていますか?」

1つ目と2つ目はセットで使います。点数そのものより、点数を動かす要因が本人の口から出てくることに意味があります。3つ目は達成経験を掘り起こす問いで、本人が忘れている資源が見つかることがよくあります。

注意点

根拠のない励ましは効きにくいとされています。「あなたならできる」と繰り返しても、実際の経験と結びついていなければ、むしろ相手との温度差を生みます。言語的説得は、具体的な事実の指摘とセットで使ってください。

もうひとつは、効力感が低いこと自体を問題として扱わないことです。準備が足りない状況で「できそうにない」と感じるのは、正確な判断であることもあります。その場合に必要なのは励ましではなく、準備か目標の作り直しです。

なお、自己効力感が高すぎる場合に、準備不足のまま着手して失敗が続くという指摘もあります。高ければ高いほどよい、という単純な関係ではないことに留意してください。

参考文献

  1. Bandura, A. (1977). Self-efficacy: Toward a unifying theory of behavioral change. Psychological Review, 84(2), 191-215.
  2. Bandura, A. (1997). Self-efficacy: The exercise of control. W. H. Freeman.
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