セルフクエスチョン(自分への問いかけ)(Self-questioning)
自分自身に意図的に問いを投げかけ、答えを探す過程で思考と行動を整理する方法。コーチのいない場面で自己理解を深める中心的な技法です。
どういう意味か
セルフクエスチョンとは、自分に対して意図的に問いを立てる行為です。流れてくる独り言(セルフトーク)が受け身の言葉だとすれば、セルフクエスチョンは自分から方向を決めて投げる言葉にあたります。
問いには、意識を向ける先を決める働きがあります。「なぜ自分はダメなのか」と問えば、脳はその答えを探しに行きます。「何ならできそうか」と問えば、探す場所が変わります。答えの質は、問いの質に規定されるというのがこの技法の前提です。
書籍『結果を出す人はどんな質問をしているのか?』では、他者への問いだけでなく自分への問いを整えることが、自己変革の導き手をつくる作業として扱われています。コーチが常にそばにいるわけではない以上、日常を動かすのは自分で自分に投げる問いになります。
コーチングでどう使うか
セッションの外側を支える道具として使うのが実用的です。セッション中に扱ったテーマを、次回までの一週間、自分で問い続けられる形に落としておきます。
タイミングを決めておくと定着しやすくなります。朝の3分、退勤前、寝る前など、既にある習慣に紐づける方法が現実的です。問いは1つか2つに絞ります。数を増やすと点検作業になり、続かなくなります。
書く形式にするかどうかは好みで構いませんが、書いたほうが同じところをぐるぐる回りにくいという実感を持つ人は多いようです。
質問例
- 「今日、うまくいったことは何ですか。小さくても構いません」
- 「本当は、何を大切にしたいですか?」
- 「いま自分がすでにやっていることのうち、続ける価値があるのはどれですか?」
- 「明日の自分に、ひとつだけ引き継ぐとしたら何を渡しますか?」
いずれも、答えが一つに決まらない開かれた問いです。はい・いいえで終わる問いは点検になりやすく、セルフクエスチョンには向きません。
注意点
最も気をつけたいのは、「なぜ」で始まる問いが自己批判の入口になりやすいことです。「なぜできなかったのか」は原因の分析に見えて、実際には自分を責める材料集めになりがちです。「何が邪魔をしたか」「どこまでは進んだか」に置き換えると、同じ状況でも扱えるようになります。
もうひとつは、問い続けること自体が目的化してしまうケースです。考えが同じ場所を回り続けているときは、問うのをやめて体を動かす、人に話す、といった別の手段に切り替えたほうが早いことがあります。
気分の落ち込みが強いときの内省は、かえって沈み込みを深めることがあると指摘されています。つらさが続く場合は自分への問いで解決しようとせず、専門機関に相談してください。
参考文献
- Grant, A. M. (2003). The impact of life coaching on goal attainment, metacognition and mental health. Social Behavior and Personality, 31(3), 253-264.
