セルフトーク(Self-talk)
頭の中で自分に向けて交わしている独り言のこと。無意識の口ぐせが行動や気分を左右するため、コーチングでは自覚し、言い換える対象として扱います。
どういう意味か
セルフトークとは、声に出さずに自分へ向けて話している言葉のことです。「また失敗した」「たぶん無理だ」「まあ、やってみるか」——一日のうちに膨大な量が流れていきますが、ほとんどは自覚されないまま過ぎていきます。
これが問題になるのは、内容ではなく自動性のほうです。同じ場面で同じ言葉が繰り返されると、それが事実の描写なのか、単なる口ぐせなのかの区別がつかなくなります。「自分は人前が苦手だ」という一文が、検証されないまま前提として働き続ける状態です。
書籍『結果を出す人はどんな質問をしているのか?』でも、自分へのことばの質が思考と行動を形づくるという観点から、セルフトークを整えることが自己変革の入口として位置づけられています。
コーチングでどう使うか
まず取り組むのは、書き換えではなく気づくことです。どんな場面で、どんな言葉が出てくるのかを一週間ほど拾ってみるだけで、自分のパターンが見えてきます。
そのうえで、言葉を「事実」と「解釈」に分けます。「準備が3日遅れた」は事実、「自分は要領が悪い」は解釈です。ここを分けないまま前向きな言葉に置き換えようとしても、うわべだけの言い換えになりやすくなります。
自己効力感の研究では、言語的説得(自分や他者からの励まし)が効力感の情報源のひとつとして挙げられています。ただし、根拠のない励ましは効きにくいとも指摘されており、実際の小さな達成と結びつけて語ることが実務では重視されます。
質問例
- 「いまの場面で、頭の中ではどんな言葉が流れていましたか?」
- 「それは事実ですか、それともいまの解釈ですか?」
- 「同じ状況にいる大切な友人になら、どう声をかけますか?」
- 「一日の終わりに、自分にかけたい一言があるとしたら何ですか?」
3つ目は、自分に対してだけ極端に厳しくなっている状態を緩めるのに使えます。他者に向ける言葉と自分に向ける言葉の落差そのものが、話す材料になります。
注意点
ポジティブな言葉への言い換えを強要しないことが最大の注意点です。「そう思ってはいけない」という扱いをすると、否定的なセルフトークを持っていること自体が新たな自己批判の材料になります。
ACTの考え方では、思考を消したり反対のことを言い聞かせたりするのではなく、「いま『無理だ』という考えが浮かんでいる」と距離を置いて眺めることが提案されています。消すのではなく、置き場所を変えるという発想です。
なお、自分を責める言葉が長く続き、日常生活に支障が出ている場合は、コーチングの範囲を超えます。医療機関や相談窓口につなぐことを優先してください。
参考文献
- Bandura, A. (1997). Self-efficacy: The exercise of control. W. H. Freeman.
- Hayes, S. C., Strosahl, K. D., & Wilson, K. G. (2012). Acceptance and Commitment Therapy (2nd ed.). Guilford Press.
