作業同盟(Working Alliance)
支援者と相手が、目標・課題・情緒的な結びつきの3点で足並みを揃えている協働関係。介入の効果を左右する共通要因として繰り返し指摘されてきた概念です。
3つの要素
作業同盟は、Bordin による整理が広く用いられています。支援関係を3つの要素に分けたものです。
| 要素 | 内容 |
|---|---|
| Goal(目標) | どこへ向かうのかについて合意できているか |
| Task(課題) | そのために何をするのかについて納得しているか |
| Bond(結びつき) | 互いへの信頼と尊重があるか |
重要なのは、関係の良さ(Bond)だけでは足りないという点です。仲が良くても、目指すところがずれていれば協働は成立しません。逆に、目標が明確でも信頼がなければ、率直な話は出てきません。3つが揃ってはじめて同盟と呼べます。
ラポールが「話しやすさ」という関係の空気を指すのに対し、作業同盟は「一緒に何をするか」という合意を含む、より仕事寄りの概念です。
効果を左右する共通要因として
心理療法の研究では、用いる技法の種類よりも、支援関係の質のほうが結果との関連が安定している、という議論が長く続いてきました。特定の学派に固有ではなく、多くのアプローチに共通して働く要因という意味で「共通要因」と呼ばれます。
コーチング領域でも同様の検討が行われており、作業同盟とクライアントの成果との間に関連があることを報告するメタ分析があります。ただし、こうした研究の多くは相関にもとづくもので、同盟が良いから成果が出るのか、成果が出ているから同盟が良く見えるのかを分けきれていません。因果を断定できる段階ではない点は押さえておく必要があります。
それでも実務への示唆ははっきりしています。質問技法を増やす前に、目標と進め方の合意を確認するほうが効く場面が多い、ということです。
確認するための質問
同盟は、定期的に言葉で確かめられます。
- 「いま向かっている方向は、当初の目標と合っていますか?」
- 「この進め方は、やりやすいですか。変えたほうがいい部分はありますか?」
- 「私に対して、言いにくいと感じていることはありますか?」
3つ目は答えにくい質問ですが、聞くこと自体が意味を持ちます。
注意点
同盟は固定されたものではなく、途中でずれます。順調に見えるセッションほど確認が省かれ、気づいたときには目標が変わっていることがあります。数回に一度は上の確認を挟んでください。
また、企業でのコーチングでは、依頼元と本人の目標が食い違うことがあります。誰との同盟なのかが曖昧なまま進めると、双方の信頼を失います。最初に、何をどこまで共有するのかを明確にしておくことが必要です。
参考文献
- Bordin, E. S. (1979). The generalizability of the psychoanalytic concept of the working alliance. Psychotherapy: Theory, Research & Practice, 16(3), 252-260.
- Graßmann, C., Schölmerich, F., & Schermuly, C. C. (2020). The relationship between working alliance and client outcomes in coaching: A meta-analysis. Human Relations, 73(1), 35-58.
